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金融資産年間200万円増が目標である家庭の記録

ジャムぞうの聖域なき財政改革

家計管理

浪費している時の心理 その3:遅延割引と変化抵抗

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行動心理学の教科書を使って自分の心を抉り出すという行為、それにより浪費への根本的な解決方法は見つかっていないと先に宣言しておく。ただし自分の行動を分析するというものは意外に楽しいもので、これからの倹約生活を送るにあたって頭の片隅に置いておくことで損はないと思う。多分。

ちなみにこれからの文書は不眠症の人にとってオススメだ。書いている自分も眠くなってくるくらい眠くなるからである。

またこれからの文章は「意思決定と経済の心理学(坂上 貴之【編】、朝倉書店)」(1)から多く引用している。

浪費している時の心理

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浪費している時の心理 その2:表面的な考え方編

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遅延割引① : 我慢できない人の価値観

ダイエットをしている人にとって、最終的な報酬、言い換えると目標は「スリムになる」事だが、ダイエット中に「ケーキを食べる」、「スリムになる」という選択肢が出てきたとする。ここで「ケーキを食べる」を選択する人は、セルフコントロールが苦手な人、長い期間の後で得られる「スリムになる」という報酬に対して、価値を低く見ている人という事になるらしい。このような選択をする事は「割引率が高い」と言う。私の例でいうと、タバコを辞めた事による年間25万円の節約という大きな報酬よりも、目の前の1本23円のタバコから得られるニコチンの方に価値を見出していたという事で、「年間25万円の削減」という価値が他の人より大きく割り引かれている、言い換えると私の価値観は「割引率が高い」という事だ(あってるかな)。

遅延割引② :例:年金への加入についての応用

「意思決定と経済の心理学(坂上 貴之【編】、朝倉書店)」から引用すると、確定拠出年金制度(401K)は魅力ある制度だが、その貯蓄率が低い事が指摘されている(多田、2003)(2)。401Kへの加入は現在の消費を抑える代わりに、退職後により大きな消費を回す事になる。この貯蓄率が低いという事はセルフコントロールが不十分であるといえる。

セイラーとベナルツィという研究者(2004)(3)は、ある企業における貯蓄率の低い従業員に対し、毎年の昇給の度に貯蓄率を上げるプラン(SMarT: Save More Tomorrow)を提案し、希望者に実施した。その結果、3.5%だった貯蓄率が4回目の昇給時には13.6%まで上昇したと報告している。これに対して、コンサルタントから助言を受けただけの従業員の貯蓄率の上昇は8.8%にとどまっていたという。SMarTへの加入は自分で衝動的行動がとれないように工夫する自己拘束(コミットメント)としてうまく機能している、と評されている。

ここまで見ると、私はセルフコントロールが苦手な人間で、資産形成に対しては価値を感じておらず、目の前の酒とタバコの方が価値があると感じていたのだろう。遅延割引という概念は不摂生な生活を解決してくれる手段になりえないが、「お前の行動はこんな概念で説明できるかもしれんよ」という道しるべの様なものが出来た感じがした。

変化抵抗① : 変化しようとする時の心

次に変化抵抗であるが、「意思決定と経済の心理学」では、ある行動を取っていて、行動の持続を妨げるような事態が環境に生じた場合に、その行動が持続する傾向を変化抵抗と呼ぶ事にする、としている。例えば、「酒とタバコと趣味」に明け暮れていた私が、倹約する事になったとしよう。その時は快楽に溺れる生活が変化する事になるが、独身時代は全くそのライフスタイルを変える事無く、倹約生活への「変化」に対して「抵抗」して快楽に溺れる生活を「持続」させていた。

変化抵抗② :例:子供への教育 -良い行動を持続させる事への応用

自分にとって望ましい行動を「起こす事」も重要だが、それを持続する事も重要だし、難易度も上がる。しかし一度継続させてしまえば、あとは流れに乗っていけばいい。積立投資みたいに。そのように行動を継続させるための方法があるらしく、その名も「高確率要請連鎖技法」、、だって。なんか漫画バスタードで「高確率要請連鎖技法(オーヴァーデュライブ)」とかいう感じで詠唱されていそうだが、子供や発達障害の人に行動を覚えさせる事でも用いられている技法らしい。

簡単に出来る事を高確率要請、なかなか出来ない(応諾してくれない)事を低確率要請といい、高確率要請事項を何回かに分けて実行すると低確率要請事項を達成しやすくなる。例えばこんな実験があるらしい。

被験者に「机の上を片づけて」という難しい課題をする前に、「手を叩いて」、「頭を触って」、「抱きしめて」という様に簡単な行動から徐々にレベルを上げていきながら「机の上を片づけて」というお願いをするよ方が、いきなり「片づけて」と要請するより承諾してもらえる確率が高まったという。この際には簡単な課題をクリアできたら「よくできました」と褒めて「勢い」を付けてあげる事が重要との事である。

私の場合、「200万円」という貯蓄額に向けて色々倹約をしてきたが、まだその目標は達成できていない。しかし「倹約生活」という「行動」は起こし、それを「持続」して毎月の貯蓄額も増えている。最初は変化抵抗のたとえで「快楽生活を持続している中で、倹約という邪魔者に抵抗する」という様に例えたが、今は「倹約生活の中で、誘惑に抵抗する」という様に視点が変わっている。いきなりは倹約生活を持続する事は難しいが、小さなアクションを勢いづかせる事、つまりより高い目標を達成するためにはホップステップして勢いをつけてジャンプたほうがやりやすいという事だ。

例えばRPGのゲームでラスボスを倒す事を目標としよう。通常主人公のパーティーは最初は雑魚キャラ、次に中ボスを倒し、レベルを上げて勢いづいてからラスボスに挑むはずだ。FFならゴブリン、DQならスライム、ロマサガならコボルトが雑魚キャラだが、初期フィールドでいきなり、ベヒーモスやキラーマシン、イフリートが出てきてパーティーが叩き潰される仕様ならだれにもクリア出来ずにくそげーの評価をゲットできるであろう(この例えはあっているのだろうか)。

もしくは妻との結婚を目標としたとする。しかし学生時代の私がいきなり出会って5秒でプロポーズしてもドン引きされるか無視されるか通報されていた確率が高かったと思われる。

ポジティブな行動を続けて価値を得る

私が倹約生活を始めたのは結婚してすぐではなく、子供が出来てからだ。それまでは車を購入する事を目標につき5万円の貯蓄を続けていたが、同時にタバコ等も継続中であった。つまり、様々な倹約を経ての資産の形成は私にとって価値が低かったことになる。しかし家族が増えたことにより、「家族を養うためのより多くの資産形成」という目標が出来た。これまで2回に渡って紹介してきた倹約の途中には、化粧品やコンタクトはネットで買う、wimaxはとっとと解約という「すぐに出来る」事から始め、勢いをつけてから「タバコ」というボスに着手し始めた。また将来の報酬(家族を養う事と車の購入)獲得のために我慢するセルフコントロールの意識も次第に働くようになってきている。また遅延割引による価値の低下は「長期期間」であればあるほど起こりやすいので、目の前にニンジンをぶら下げてモチベーションを保つために車を5年後に買うという様に、時間を短縮した事も倹約生活開始に心理的に有利に働いていたようだ。

当然その間、削減額を記録して妻にも見せていたが、「よくやった」というお褒めの言葉を賜った事で倹約が流れに乗ったことは言うまでもない、、、、ような気がする。

しまいに

今回の解釈が、心理学の専門家から見たら間違っている解釈もあるかもしれない。もしくは私が勝手に心理学の概念をこじつけているだけな気もする。その際はご指摘ください。もしくは私の頭を割って中身を見て、心理学実験の被験者にさせてください。セルフコントロールが苦手な人間の良いサンプルが手に入るかと思います。

以上です。

<参考文献>

(1)意思決定と経済の心理学(坂上 貴之【編】、朝倉書店、2009

(2)多田洋介、行動経済学入門、日本経済新聞社、2003

(3)Thaler,R,H., & Benartzi,S. Save More Tomorrow:Using behavioral economics to increase employee saving,Journal of Political Economy,112,164-187.(2004)
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